脅しがきかない

「お菓子ちょうだい。じゃないといたずらするぜ」
「どうぞどうぞ」

そう言って差し出された手にお菓子はない。夫はほほえんで続ける。
「日頃いたずらばかりしてる人に慣れてるから、今日も存分にいたずらしたらいいよ」

ハロウィンでお菓子をもらえる人たちは、ふだん、いたずらをあまりしないから胸を張って脅せるのだ。善行あってこそのお菓子。そうかそうか善行善行。私も積んでやる。

そう思っていたのに、気がついたらドアに隠れ、彼がやって来るのに合わせて「わっ!」と出て驚かせていた。