レジスタンス

英文学史の教科書。長い中世の時代からなかなか抜け出せない。先週はカンタベリー物語を読んだ。カンタベリー大聖堂へ巡礼に行く途中で出会った人たちが、2つずつおもしろい話を披露して、最後に誰の話がいちばんか決めようということになる。いろいろな階級の人たちが集まっているところが文学史的に重要。気高い身分の人もいれば、庶民もいる。高尚な話もあれば、下品な話もある。下品な話が本当に下品で、笑いのつぼに共感できない。あくまでも勉強だからと割り切るが、たまに「私は何をやってるんだろう」と天井を見上げる。

かたやアメリカはなんかもうわけがわからない。日本のメディアは情報を積極的に出さない。アメリカ人の友人は体調を崩している。「今、こんな状態なんだよ!」とYouTubeのリンクを次々と送ってきてくれるのだけど、警告的な動画を見続けていると私の調子も狂う。私の頭がイギリスの中世にいることを相手は知っている。それに対して、「もっと外の世界を見て!」と言われているようで嫌だ。選挙が終わった時点で予想できたことだけど、「私は今のタイミングで米文学専攻で院進して何ができるんだろう」とも思う。

私はXにあまり文章を書かない。キャベツが高い、お米が高い、今日はもやしを多めにしよう、ああ目標のページまで読みきれなかったとか考える生活の断片の写真が、主な投稿だ。書きたいことはこちらのウェブサイトに書く。それはXのトップの人間に私が侵食されないようにするための防衛だ。退会しようとは思わない。他のメディアから情報を得ながらも、あのプラットフォームがどうなっていくのか、中にいて観察しないといけないと思っている。アメリカの教育機関が破壊されます、人々が体制にNOと言えなくなるように教育機会が奪われます、勉強系アカウントが凍結されます、となれば居場所はなくなるだろうが。

たいていの時間をひとりで過ごしている。静かな混乱の中にいる。「何ができる?」を考えると絶望してしまうから、「何をしたい?」で日々を満たすように努める。学びたい。読書と勉強と書きものを続けることが、私の体力作りであり、戦いへの準備であり、抵抗だ。