17時頃に仕事を終えて、さてさて夕飯を作りましょうかねと部屋を出たら、エアコンの電源がONになっていた。我が家は2LDKで、私の部屋の横にリビングと台所がある。リビングのエアコンの風が台所にも向かう構造。夕食にはまだ早いから、私が台所に立つのを見越して、夫がスイッチを入れておいてくれたということだ。
メニューはあらかじめポトフだと言っていた。彼がポトフをとても楽しみにして、その表現手段としてエアコンを使ったことはわかった。「ぼくはポトフを作れないけれども、エアコンのスイッチを押して台所を暖かくしておくことはできます」というプレゼンテーションである。
その反面、「君は寒がりなので、部屋が暖かいと嬉しいでしょう。だから事前に暖めておきます」の意図も確実にある。
私のことを好きだと言って大切にしてくれる人が、創造性を発揮して、気配りの新しい視点を開発してくる。事前のエアコンはそのケースだ。重要なのは、もちろんまず片方が何かを生じさせることなのだけど、もう片方が、それを目ざとくキャッチしてこそ完成することを忘れないでいたい。日々の出来事を当たり前だと思わず、細かく観察して記憶し、定点観測データにする。何かの些細なズレや違いは、おのずと浮かび上がる。それは体調不良かもしれないし、疲労かもしれないし、陽気な気分の変化かもしれない。そんな中に、彼の気配りは混ざっている。