私はレタス巻きを作れるし、食べられるし、ふるまえる

お昼にレタス巻きを食べるため、夫とスーパーへ買い出しに行った。レタス巻きは大分や宮崎あたりの言葉で、本州で言うサラダ巻きのことである。レタス、かにかま、たまご、きゅうり、マヨネーズの巻き寿司。昆布を浸したお米を炊いて、酢飯にして、冷まして、その間に材料を切る。海苔に酢飯と具材をのせ、ぎゅっと力を入れながら巻く。縦に細く4等分したきゅうりの、緑の皮の曲線が、海苔と同じカーブを描くと成功。今日は4本中3本がうまくいった。

レタス巻きは母が作っていた料理である。縁を切っていて、母とも呼びたくない関係。彼女が私に作った料理を私も作ることに、長いこと抵抗があった。作ると、食べると、嫌な記憶がフラッシュバックしそうで怖かった。

でもある日気づいた。味付けがマヨネーズだけなのだ。彼女独自の料理というにはベーシックすぎる。たぶんこのレシピで作っている人、たくさんいる。それで気が変わった。私のアレンジを加えたら、もう彼女のとは関係ない。

私のレタス巻きは、名鉄百貨店で売られている新鮮な海苔を使う。寿司酢は岐阜の内堀醸造のもの。かにかまは、安くてけばけばしい色のじゃなくて、薄い色で本物の蟹を模した「大人のカニカマ」。たまごには少しの砂糖とマヨネーズ。お店にあれば、ぷちぷちのとびっこも入れる。そして私がレタス巻きをふるまうのは、いがみ合っている男じゃなくて、私のレタス巻きの歴史を知ったうえで、キラキラの目でたちどころに完食してくれる夫。

お酢の賞味期限がもうすぐだ。また巻くよ。