探しものは何ですか?
見つけにくいものですか?
カバンの中も つくえの中も
探したけれど見つからないのにまだまだ探す気ですか?
井上陽水「夢の中へ」
それより僕と踊りませんか?
夢の中へ 夢の中へ
行ってみたいと思いませんか?
この曲は「うふっふ~ うふっふ~」と続く。高校の化学の先生が、「いいよな、『うふっふ~』って歌ってりゃ金が入るんだから」とよく笑いながら言っていた。
大学の英文学史のノートが途中で切れていた。ロマン主義以降ぜんぶ。必修だから欠席したはずがない。どこ行った。
今年はこれからロマン主義以降の勉強をやりなおす。教科書のアンソロジーも十分に説明が詳しいんだけど、それをサブにしてご自身の見立てや重要だと思っているところを伝えてくださった先生の言葉も読み返したい。
大学の資料は全部残してある。教科書、ノート、ルーズリーフ、配布されたプリント、フィードバックつきのレポート、卒論、履修案内、シラバス。ルーズリーフとレポートのバインダーを引っ張り出してきて探す。さくさくやればすぐ終わるのに、さくさくやれない。「ああそういえばこういう勉強もしたな」と思ったり、B+のレポートを読んで何がAに至らなかったのかが今ならわかって悔しがったり、「この作家の別の作品、つい最近読んだ」とうれしくなったり。私には写真のアルバムや日記帳を読み返して懐かしむ習慣がない。大学の資料を保管しておいて時折読み返すのは、似た気持ちなんだろうか。
頭の中で井上陽水がずっと歌っていた。
休む事も許されず
笑う事は止められて
はいつくばって はいつくばって
いったい何を探しているのか
休むことが許されて、笑うことも止められない場所で、紙をめくりながら、英文学史Ⅱのノートの残りを探しているんですよ。
探すのをやめた時
見つかる事もよくある話で
踊りましょう 夢の中へ
行ってみたいと思いませんか?
これからどうやって生きて行けばいいんでしょう、生きる意味ってなんでしょう。お金が厳しいので留年は無理。絶対ストレートで卒業して就職。そんなことで頭がいっぱいだった当時の私の愛読書は、小説だと主人公が逃避する話ばかりで、哲学だと困難に立ち向かうことを説く文章ばかりでした。探しても、探すのをやめても、探しものは見つかりませんでした。
探しものは何ですか?
まだまだ探す気ですか?
夢の中へ 夢の中へ
行ってみたいと思いませんか?
たくさん走って、こけて、また走ってはこけました。今はいろいろなことを了解して、切り落として、選択して、時には妥協もしてここにいるんですが、当時の私からしたら、夢のような場所で、なりたかった自分に近づいている気がしますよ。心身も、生活も、人間関係も、少しずつ、周りの人の助けも借りながら作ってきました。
英文学演習IVのルーズリーフのあいだに、英文学史Ⅱのルーズリーフが4枚と、プリント3枚が挟まっていた。0.3のシャープペンでびっしり書かれた文字から浮かび上がる当時の私に笑う。どうしてこれだけルーズリーフにしたの。未来の自分への思いやりが足りないじゃん。
見つからないなら作る。これが、今の私が見つけたものです。踊るなら夫と一緒がいいです。新しいノートも作ります。自分の道を進みますね。
うふっふ~。
