たくさんのZをつかまえる

catch some Z’s
直訳:いくつかのZをつかまえる
意味:うたた寝する

夫は寝るのがうまい。
横になったら最後、すぴーっと眠れる。

義理の母は、我が家を訪れて寝室が別だと知ったとき、眉をひそめた。
昔の会社の先輩も、「え、新婚早々に別なの!?」と言った。
「今どき、いろんな価値観があっていいじゃん」とは思いつつ、「寝る時間が違うので」と答えた。

正確に言うと、眠るスピードが違う。
一緒に寝ていた時期だって、なくはない。
前の、もっと狭い家ではそうだった。
私は夜、眠剤を飲んでやっと眠気が来るタイプ。
「今日は仕事が楽しかったから、クールダウンするのに時間がかかるなあ」とか思ってる横で、彼は一瞬ですうっと寝息を立て始め、気持ちよさそうに夢の世界へ向かう。
疲れているときは、いびきもかく。
うらやましくて、いらいらして、うるさくて、焦って、彼の鼻をつまむ。
それでしばらく止んでも、また始まる。
今度は顔をぺちっと叩く。
しばらく止む。また始まる。
というか、生きてる以上、呼吸、寝息は当たり前なんだけど、こちとら眠れないのだ。
顔をばちっと叩く。
止まって、また始まる。
いよいよ耐えられなくなって、ベッドから落とす。
低いので、ごろんと床に転がる感じ。

私の言い分は「うるさい」、彼の言い分は「ぺちゃんこにされる」。
別々にするしかなかろう。
それで幸せなんだからいいじゃないか。

そのぶん、週末の昼寝が最高。
お互い眠いときに、同じスピードで眠りに入っていけるのは、私にとって特別な時間。
夜みたいに「寝なきゃ」モードじゃないのが、かえっていい。
腕枕してもらって、抱きついて眠る。
石鹸の匂いがする。
開けた窓から入る風が気持ちいい。
部屋の中がZZZZZZ……で満ちる。