立春に問う

道の先で、手をつないだ老夫婦が歩いていた。男性は左手に節分豆の入った袋をぶらさげている。近くのお寺で買ったんだろうな。女性の白いコートのフードのファーに、冷えた光が反射する。ふたりで豆まきするんだろうか。将来なりたい姿の断片は、ふとした時に見つかる。春の曲がいいぐあいにサビに入って高まる。

ふたりは短い横断歩道を赤信号で渡った。参拝とは。手をつないだまま、やっとこさ階段を上り、パチンコ屋の中に消えた。福はうちは明日だよ。

電車待ちのあいだ、耳栓をして、英文を読む、つもりが、近くの女性の電話の声が耳栓を通過して叶わない。待つ。

「さやかさん、あのね、私ね、節分豆を買いに出たのよ。それを森野さんに伝えてほしいの。ええ。ええ。そう。頼むわよ」

「ああ、田中さん、こんにちは。明日ね。そう。うん。うん。ね。節分よ。豆ね、そう、そう。私はこれから。うん。そう?ええ。ええ」

「今お電話だいじょうぶ?ええ、そうなn」

離れる。できるだけ遠くへ。ホームの端へ向かって歩く。電車がゆっくりやって来る。ねえ、節分の何が、人々をあんなに。