1956年、高校生のカフカ

1924年に死んだカフカが、1959年のアメリカで高校生だったらという話。最初に読んだときの感想は「つまらん」だった。2回目の感想は「絶妙につまらん」。40ページ、25章ある作品。このうちある1章だけ抜き出してミニストーリーにしても十分じゃんと思った。

授業の日、家庭教師の先生の意見も同じだった。ミルハウザーのベストではない。ふたりして、しぶしぶ授業を始める。進めかたは都度私が決めていい。今回は、すべての章を要約しながら、英語を正しく読めているか確認し、表現や解釈の質問を挟む形にした。

いつもの先生は、ミルハウザーの昔の作品を繰り返し大学の授業で扱っているので、作品への評価や解釈がわりと固定的。でも今回の本は去年の夏に出た新作で、私との授業のために初めて読んだから、まだ定まっていなかった。

私が何気なく投げた質問に先生がインスピレーションを受けたり、私も刺激をもらったりして、議論が盛り上がっていった。単調に見えていた物語が深くなる。

1959年に高校生なら、ミルハウザーと同い年くらいじゃない? ミルハウザーはカフカに自分を重ねてるのかも? 自伝っぽい? ここはシーシュポス? 外に表現できないけど何か内に秘めたカフカ。ボニーはなんかいい人に見える。

授業のあと、おたがいに「ベストではないが好き」という結論に達した。私がアメリカの高校生で、同級生と文学の議論をしたら、こんな感じなのかなと思った。