春の日、第62章

歩きながら左右の目を交互に閉じていた。「やっぱり右の度数が合ってないな。いつコンタクト屋に行くかな」と考えていたら、目が合った交通整理のおじいさんにウインクされた。距離のあるウインクではなく、すれ違いざまの、顔を少しこちらに傾けたうえでのウインク。にんまり笑っていて、私も笑った。あれはウインクし慣れている。危ない危ないと思いながら、ときめきを抑えた。