透明でやわらかいテーブルクロス

野菜と肉を焼き、ソースを作り、パンとお酒を合わせれば夕食になる。野菜と肉は特売のもの、ソースは基本的な調味料を混ぜたもの、パンはたくさん作って冷凍しておいたもの、ワインはミニボトル。このパターンのディナーは、私にとって手抜きバージョンだ。肉は2人分で300円なのに、ワインは500円なのに、なんだかそれなりに見える。

手抜きは、なぜか罪悪感を伴う。夫に「手抜きでごめんよ」と謝った。彼は「いいや、ごちそうだ」と言った。私が「そうか、この人は値段とか労力で判断しないんだなあ」と思っていたら、彼は「紺ちゃんと食べるごはんはごちそう」と付け加えた。

私が料理をしているあいだ、彼も手伝いつつ、テーブルにカトラリーを並べたり、グラスやお酒を出したりする。そのタイミングでひそかに、透明でやわらかい手織りのテーブルクロスをかけているんだと思う。そういえば、夕飯は何を作ってもおいしい。いっしょに食べるとおいしい。