眠りの金継ぎ

うまく眠ることができない。ふたつめの会社を辞めたあとしばらくして、「会社員」というラベルを失った自分に耐えられなくなったあたりで、眠れなくなった。なかなか寝つけない「入眠困難」、途中で起きてしまう「中途覚醒」、眠りが浅い「熟睡困難」、希望する時間より早く起きてしまう「早期覚醒」、すべてが当てはまる。薬は飲む。飲むが、必要な睡眠時間に対して、早めに起きてしまう。他の薬はもう全部試した。

23時ごろに部屋の明かりを消して、ベッドに座り、足にブランケットをかけ、丸めた掛布団と壁にもたれるのが好きだ。30分はぼうっと窓を見ている。このあいだに夫は別の部屋で寝入っている。静かで暗い部屋は落ち着く。たまに、そのあととろとろと眠りの世界に行けることがある。体勢も崩れてきていて、掛布団が枕のような感じ。ああいうふうに眠れるのは、本当に幸せなことだ。私は3時間くらいで目を覚ます。夢の国もおしまい。台所に行って、薬を飲み、ベッドに正しく横になる。朝、夫を見送ったり、自分の仕事と勉強をしたりして、きりがついたら昼寝する。20分の日もあるし、2時間の日もある。ぼんやりタイムなしに薬を飲んで眠っても昼寝が必要だ。

睡眠時間がひとかたまりだったころを思い出せない。今の私の眠りは2、3のかけらに散らばる。まあまあ合う薬があるだけまだましなのだけど、割れてしまった眠りをうまく金継ぎできたらいいのになと思う。