New Essays Every Monday
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ぬるい希望
5時半、カーテンを開ける。朝日が当たる窓辺にスノードームがある。中に金色の星が入っている。小さいから、逆さにして雪を降らせてもすぐに止む。
光がきれいだった。きれいな光を見つけた私もきっときれいだ。あたらしいあさがきた。きぼうのあさだ。さわやかな自信をもっていい。
夫からもらったカメラで光をつかまえる。スマホじゃうまくいかんのだといっちょまえに思いながら、たくさん撮る。ぶれる。ぼける。暗い。失敗作ばかりのなかに、ぬるい奇跡の1枚があった。せみが起きてきて、合唱を始めた。これから気温が上がる。
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私のワールドツアー
メーカーの人事部に勤めていた。研修を作っていた。国内外で講師をしていた。日本で研修をやる。中国に行って研修をやる。香港に行って研修をやる。タイに行って研修をやる。ベトナムに行って研修をやる。フィリピンに行って研修をやる。シンガポールに行って研修をやる。「はじめまして、こんにちは、川瀬です。みなさんお元気ですか。限られた時間ですが楽しみましょう、よろしくお願いしますね」(JP/EN)
一時期のあれは、私のワールドツアーみたいなものだったなと、ワールドツアー中のアイドルのニュースを見ながら思った。いつでも歓待されたし、めっちゃ握手した。グッズを作っていたら売れたかもしれない。
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目くばせをしただけのような
写真家さんにお仕事をお願いした。必要最低限のことだけ伝えて、あとはお任せした。期待以上のものが納品されて自然と涙が出た。
その中からいくつかを選んで、クライアントに提案した。写真データはこの方にも渡っており、「数十枚の中からなぜあなたがその数点を選んだのかがわからない、でもあなたに任せる」と言った。目的は共有しているものの、この方の好みと私の意図は違うので、私は完成前に説明するのはやめようと思った。
写真を使って私の仕事を完成させ、クライアントに納品した。写真の意図を説明しようとしたら、「この写真は確かにこの場所だ。あなたがなぜこの写真を選んだのか、より理解できた」と言われた。
言葉を最低限にして仕事を任せるということは、賭けるというか、相手を信じるということで、言葉が最低限でも仕事を任せてもらえるということは、私を信じてもらっているということなんだと思った。言葉じゃないところで心を交わす仕事ができたようで、うれしかった。こういうのを増やしていきたい。