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鶏肉とキャベツのビール煮込み
鶏肉とキャベツのビール煮込みを作った。からあげ大くらいに切った鶏もも2枚をフライパンで焼く。そのあいだに、鍋に油とにんにく、薄切り玉ねぎ2個分を入れて炒める。玉ねぎが飴色になったら、鶏ももを入れ、ビール500mlも加え、40分、ふたをせずに弱火で煮込む。キャベツのざく切り1/4~1/2ぶんを追加し、10分煮込む。塩こしょうで調味し、チーズを振ってできあがり。材料を鍋にほいほい放り込み、調味料の細かい計量もせず、ただビールと煮込むだけ。これで勝手においしくなるのですばらしい。
食卓に出すと、夫が「よし。ぼくはいっぱい食べるぞ」と言いたげな顔をしていた。椅子の背もたれを使わず、すっくと姿勢よく座っている。発酵がいまいちゆえにしっかりめに焼いたコーンパンと、いつもよりいいワインをセット。
お肉はビールの炭酸のおかげでほろほろしている。アルコールが飛んだスープは香ばしくておいしい。私がゆっくり食べながら「キリンビールにしたけど、マルエフもよさそう」と思っているあいだに、夫は手を止めずに食べ、スープを飲む。ぱくぱくぱくぱくぱくぱくぱくぱくずごー。ワインも飲もうぜ。雰囲気のいい会話とかしようぜ。
「おなかいっぱい。あとは明日の朝ごはんにとっとこう」と言うので鍋を見たら、ひとりぶんしか残っていなかった。「ぼくがすくすく育つのが、紺ちゃんのうれしいことだよね」と言うような、きらきらした瞳。たしかにそう思っているし、どんな量であれ譲るつもりでいたのだけど、先を越されると何かふつふつと沸きあがるものが。
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だからといって
「紺ちゃんのことが、うらやましかったんだよ」
昔お世話になった年上の男性と食事に行った。会うのが久しぶりなので、どうしたって近況報告になる。今どういう仕事をしているか話した。相手の仕事、悩みなどを聞いた。
私はとても疲れて、次の日寝込み、その翌日には風邪をひいた。なにかもやもしたものがあるが、正体がわからない。夫と友人に話を聞いてもらった。自分ひとりでは、そして弱っているときはなおさら、自分のことがわからないのだ。ふたりの話からするに、私は年上の男性にばかにされたようだった。そうか、私は傷ついていたんだ。
年上の男性の悩みのことを思い出した。彼がお酒を片手にばかにしたものが、彼の悩みに対して必要なものなんじゃないかと思った。価値観が違いすぎるので、たぶん理解しにくかったんだろう。必要性もわからないんだろう。でもだからって、人を傷つけていいわけじゃない。
考え方はいろいろあっていいけれども、私を傷つけるようなことは言わないでほしいとLINEした。既読スルーなので、きっとこれっきりだろう。残念なことなのか、喜ばしいことなのか、わからない。
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ガイドがなくなる世界
今使っている英単語帳を終えて、ストックしてある次の単語帳も終えたら、自分のレベルに合った、日本語で意味や説明が書かれている本がなくなる。本屋の、日本語で書かれた参考書コーナーに行くことがなくなる。必然的に、英語で書かれた英単語帳だけになる。
大きな書店の洋書コーナーで見た単語帳は、ただ単語が列挙してあるタイプが多かった。日本語で書かれた英単語帳みたいに、記憶を助ける線や色分けが入っているわけではない。すごくそっけない。学習法の本質は変わらないだろうけれども、細かい変更は必要そうで、気乗りしない。そして日本に現物の在庫がない本も多いので、長期的に見てちょっと不便。
Xでこういう話をわざわざ発信すると、嫌味に聞こえると思う。だからここに書く。「これで学びなさい」というガイドがなくなる世界は、自由だが、心もとなくて孤独だ。