Writings

New Essays Every Monday

  • 5月4週目の日記

    5月22日(月)
    疲れているとき、よく言い間違える。頭と口が一致しない。これまでの実績は
    ・換気扇→かつおぶし(「か」と文字数の一致)
    ・お風呂に入ってください→クローゼットに入ってください(とにかく入ってほしかった)
    ・おかげ横丁で食べ歩きしたいです→おかげ横丁で食い逃げしたいです(とにかく食べたかった)
    今日の新作は、「鶏胸肉でお仕置きしたい」だった。本当は「鶏胸肉で作り置きしたい」と言いたかった。

    5月23日(火)
    「きょうのはてなブログ」にピックアップしてもらえた影響で、アクセス数が伸びた。引用箇所は、手間をかけたキッシュを夫が一瞬で食べたところだった。帰宅した夫が「ぼくの手柄ってことやな」と言った。「ん?」と返したら、主語が「ぼくたち」に変わった。ぶんぶん激しい握手をした。

    5月24日(水)
    ホットケーキが苦手だったけど、最近好きなレシピを見つけて、朝食に焼いている。ふわふわじゃなくて、もちもちが好み。卵1個、牛乳100CC、小さめ4枚というキリのよさも気に入っている。仕事柄、味や食感はもちろん、製造しやすさも気にしてしまう。こういう細かさとか微調整、なんか人生って感じ。

    5月25日(木)
    ミルハウザーのThe Next Thingの予習。いつのまにか現れたディストピア。友人が好きそうな作品。夕食はゴーヤチャンプルー。ゴーヤの種が真っ赤に熟れていて、ぎょっとした。先週肉屋で仕入れたウィンナーと、男前豆腐を混ぜる。味付けが薄すぎて、ラー油が出勤。クラフトビールを1缶、ふたりで分ける。お高めのやつ。彼は自分では買ってこないけど、私が買ってくると積極的に飲む。もう少し遠慮してくれてもいいぞ。謙虚さがあると、こちらも分けてあげてもいいかなという気持ちになるものだ。

    5月26日(金)
    午後がまるまる会議の見込みだったので、朝をゆっくり過ごした。なぜ「ワッフルを焼こう」と思ったのかわからない。砂糖と卵に泡立て器でしゃかしゃか空気を含めているとき、なかなか角が立たなくなってから後悔した。ここまで時間をかけて食べたいのかワッフル。ここまで時間をかけたら食べたいと言わなくちゃいけないワッフル。まだかな。ハンドミキサーが欲しいな。うーん。あー。腕痛い。そういえばー……。結局頭が仕事モードになり、考えごとをしながら作った。結果オーライ。はちみつがよく合う味だった。

    5月27日(土)
    4月にあまり食事を摂れなかった影響でぱさぱさだった体に、潤いが戻ってきた。栄養が行き渡っている感じがする。髪がつやつや。肌がぴかぴか。お風呂でコンディショナーを洗い流すとき、スキンケアをなじませるときの感触が違う。底に落ちても戻るんですねえとしみじみ。とはいえ月末オブ月末、しばらくの食事は質素に。トマト、レタス、卵の和風スープがおいしかった。

    5月28日(日)
    文学の個人レッスン。ミルハウザーのThe Next Thing。彼はなぜこんな文章を書けるのでしょうかという、疑問文に見せかけた感嘆文を毎回生成している。今回はミルハウザーにしては珍しく事件が展開する。異質なものがじわじわ侵入する、不気味な感じはさすが。昨日から始めたお腹の筋トレの影響が早速出ている。じわじわ痛い。じわじわ梅雨が来る。じわじわだらけの日。

  • 夏の蝶々

    have butterflies in one’s stomach
    直訳:お腹の中に蝶々をもっている
    意味:そわそわして落ち着かない、はらはらする、胸がどきどきする

    大学生のとき、日本人の教授に送った英語のメール。
    単にnervousと書けばよかったところに、have butterflies in my stomachと打った。
    「なんて美しい表現なんでしょう」という感じの返信をもらった。
    権威ある立場の先生だから、この表現を知らないはずはないだろうと思っていた。
    知らなくて純粋に驚いたのか。
    知らないふりをして、初めて見たように言ってくれたのか。

    このところ、そわそわしている。
    仕事のチームメンバーが増えるのだ。
    その人のことが心配なんじゃない。
    私はどちらかというと仕事を作るほう、雇用を生むほうの立場で、私/私たちの仕事に他の人を巻き込んでしまっていいのかしらと思う。
    失敗しても一緒に笑い飛ばしてくれそうな人なのに、緊張してしまう。

    Tシャツを着る。
    裾を少し持ち上げ、空気を含ませる。
    その拍子に、蝶が入ってくる。
    Tシャツと空気の膨らみの中で蝶が動く。
    お腹に羽が当たってくすぐったい。
    深呼吸する。
    裾をもう一度上げると、蝶が外に出て飛んでいく。
    太陽の光を受けて輝く。
    持ち上げたままのTシャツに影が映る。
    勝手にそんなイメージをして、不安に隠れた尊さを見逃さないようにしている。

  • 誇らしい気持ちでいっぱい

    日付が変わる頃、眠剤を飲む。
    夫は別室でとっくに寝入っている。
    私は自分のベッドに座って、眠気が来るのを待つ。
    この時間が好き。
    座ったままで寝ること、途中で起きて横になること、最初からきちんと横になることが、それぞれ1/3の確率。

    おととい、座ったままで寝た日、3時くらいに目が覚めた。
    そしてそのタイミングで、なぜか突然夫が現れた。
    たぶん横に座って、私を抱き寄せた。
    私は彼の腕の中で、瞬時にすぴーっと寝息を立て始めたらしい。
    (普段、私のほうが先に寝るのはありえない)
    そのまましばらくすると、少しずつ体勢が崩れていった。
    私はベッドの上で、寝返りとは違った形で、ぐるんと回っていたらしい。
    出会って以来、トップ3に入るようなかわいさだったらしい。

    私がかわいかった瞬間の不動の1位は、付き合い始めた頃の「電柱ちらり」。
    待ち合わせに遅れた私は、彼の近くまで着いて、電柱に隠れた。
    ここでちらっと顔を見せたら許してくれるかしらん、きゅんとさせちゃうかしらん、んなわけないか、と思いながらそっと顔を出した。
    目が合った。
    彼は想定外にちょろかった。

    数年前のそれに匹敵するようなかわいさを、下心なく表現できた私に、成長を感じる。