New Essays Every Monday
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ベンジャミン・フランクリンさん
ノートンアンソロジーは、大きな時代説明のあと、個別の作家の説明と、重要な作品の全文あるいは抜粋を載せている本だ。英米文学専攻で大学院に入りたくて、今はアメリカ文学のものを読んでいて、次はイギリス文学のものを読む予定。
あまり理解されないと思うけれど、私はこのノートンアンソロジーが大好きだ。文学史的に重要なことはもちろん載っているんだけど、加えて些細なエピソードが散りばめられているのがいい。一般的な文学史の教科書に「有名な牧師」と書いてあるような人の説明で、ノートンは「代々宗教家という家系のプレッシャーで、不安や抑うつがひどかった」などと書いてある。感情移入して覚えてしまう。その人のパートを読み終えたら、「さん」づけで呼びたくなる。
先週はベンジャミン・フランクリンについて読んだ。彼はアメリカ建国の立役者のひとりとして、また自伝や発明で有名な人。加えて、奴隷制度や、私生児を生んだ場合、女性だけが処罰の対象だったことなどに反対した人。一般的な文学史の本の説明はここまで。ノートンには、自伝はもちろん、抗議の文章自体も掲載されていて、より多面的にその人に会える。ああ、こういう点に着目したのか、とか、こういう口調だったのか、とか、この文脈ね、とか。勉強という感じがしない。
ベンジャミン・フランクリンさんと言えるようになって、ノートにメモを残す。この蓄積で、私はどんな世界に行けるんだろう。
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変わらない風景の水面下
最近、部屋や机の写真を撮ってXに上げることが好きだ。院に行きたいと決めてから、勉強を中心に生活が回っており、早寝早起き、お酒控えめ、ごはんは名もなきものをさくっと済ませる。読みたいものはアンソロジーにまとまっているので、いわゆる本を読んでない。映画も観てない。外出はもともと少ないし、カフェより家のほうが空間的にも飲食的にも落ち着く。だから部屋と机以外の写真があんまりない。
変わり映えしない風景なのに、確実に季節は過ぎていく。アンソロジーと単語帳の読了ページは増え、英文解釈と英作文の使用済みノートも増えていく。ここにある大切なものを残したくて、写真に撮って、言葉を絞り出して記録する。あとから振り返ってどんなことを感じるのか、楽しみにしている。
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結婚生活の断片
日曜日の朝、洗濯機が壊れた。服とタオル、洗剤を入れてボタンを押したら、水が出なくなっていた。ぶしゅっ、ぶしゅっ、ぶぶぶしゅっ、と、洗濯機が水を絞り出したそうな音はする。
夫が大学生のときに買ってから、15年以上経ったものだ。物持ちがいい人に堅実なメーカーが合わさるとこうなるんだなという好例。洗濯機が現役なことを、彼はよく自慢していた。だから壊れていることをすぐに認めない予感がして、10分様子を見た。何もせず待ったり、ボタンを押したり、水道の栓を開けたり閉めたりした。壊れたと認定し、ようやく彼を呼び、「完全に壊れているので、私のせいにすることなく、余計なことも一切言わず、今日買いに行くと決めて調査を開始してください」と告げた。一瞬、いや、そうは言ってもさ、みたいな空気を出したものの、私がやったのと同じようにあれこれいじったあと、納得したように去った。
私は洗濯機に入れてしまったものを出し、お風呂で手洗いを始めた。排水口がついている、折りたたみのバケツ。壊れたのが、冷たい水が気持ちいい季節でよかった。洗剤の匂いは好きだ。窓から太陽の光が入る。ちょっと手出しして、ああこれは長くなると気づき、スマホを取りに行った。音楽を流す。1時間。私は手が小さく、水切りが甘くなる。床を濡らしながらベランダに行く。
同じメーカーの、同じシリーズにしよう。調査を終えた夫が部屋から出てきて言った。昔買ったときより高くなってるよーとぼやく。届くまで1週間はかかるよね。あとで電気屋さんに見に行こう。
部屋がびちょびちょになっていて、彼は私を手伝いたくても安易に手伝えない。終わるまで、少し離れて待っていた。
もともとあった外出の予定にヤマダデンキを追加する。何を買うかはもう決まっているのに、白い洗濯機ばかりの空間を行き来して、フタを開け閉めして、やっぱりこれだねと言い合う。店員さんに声をかける。夫が、何を引き取ってほしくて、ポイントや送料がどうで、到着日はいつか、最終的にどれくらいの値段になるかなどを確認する。それから移動して机に座り、店員さんが書類に細かく数字や記号を書き込む姿を見た。細かく指差し確認する動きに合わせて自分の頭を動かしていたら酔った。次は何年もつかね。
夫と結婚したんだなと思った日だった。