New Essays Every Monday
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家事場のコナン
夕飯を作りながらよくコナンを観る。iPadとNetflix。もう何回リピートしたかわからない。あらかたストーリーは知っている。それなのに繰り返し観てしまう理由はふたつ。
ひとつは、パターンが一定なこと。事件が起きて、コナンが推理して解決する。この安心感。画面を見ていなくても話がわかる。毎日新しい番組、新しいエピソードを観るとなると、画面から離れられなくて困る。展開によってはハラハラドキドキ緊張してしまう。20分強で終わるのもいい。
もうひとつは、静かな時間を避けられること。夕飯を作るあいだ、ひとりで家にいるのは少し怖い。夫が飲み会で遅くなる日はもっと怖い。すーっとリビングのドアが開いて、黒い人が現れるんじゃないかと思う。コナンを観るから黒い人が怖いのだけど、コナンを流していると黒い人がうちに現れないんじゃないかと思える。
今年も夏至が過ぎた。日が短くなる。暗い時間が増える。黒い人が怖い。だからコナンを観る。だけど黒い人が現れる。だからコナンを観る。だけど、
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習慣おためしキャンペーン
新しい習慣をつくるとき、私はとても時間をかける。「よし、やろう!」と意気込んで、数日後に「あっ、できなかった。だめじゃん自分」ということがない。どこがどう楽しいか、何につまずくかまでよく観察して、自分の本心やパターンを見つけ、新しい目標につなげるためのシステムにする。この習慣の制作期間を「おためしキャンペーン」と呼ぶ。おためしが本番になった頃には楽しく続いてる、自信がついてる、もし途中離脱したとしても傷つかないお得なキャンペーンだ。
1 「やってみたい」を検知する
2 「やってみたい」を常温にする
「とてもやってみたい!!!」も、「あ、ちょっとやってみたいかも」も、手にしたまま数日待つ。熱いまま始めるのは、始めやすい半面、冷めやすい。低温のものは、徐々に熱を帯びるものもあれば、冷めたままのものもある。見たり聞いたりして入ってくる多くの情報は私を刺激して、瞬時にいろいろな感情をもたせるけど、それが本当に今やってみたいことなのか、あとでいいのか、実は必要ないのかはその時には判断できない。なりふり構わず始めて失敗して、を高速に繰り返すよりも、何が本当の「やってみたい」なのか、「時間のふるい」にかけて始めるほうが私には合っているみたいだ。時間は有限だし、体力もないし。3 やってみる(「やってみたい」選抜用)
4 1次テスト
軽くやってみたあとに、もう一度ふるいにかける。好きか嫌いか。好きなところも嫌いなところもあるなら、もっと検査時間が必要なので前に進む。嫌いなら止める。嫌いなものを無理してやらない。「嫌いって思う自分がだめ」って思わない(とあえて言うということは、昔はそう思ってたってことだ)。5 超短期目標を決める
わかりやすい、覚えやすい、ちょっとがんばったら届くような目標を決める。「やってみたい」を選抜試験してから目標を立てるのがキモ。現実的な目標が立てられる。一度やってみているので、頭でっかちで崇高なだけの目標にはなりにくい。6 やってみる(目標と手段の精査用)
決めた目標に向かう。やっぱり嫌いなら、ここで止める。7 2次テスト
目標と手段が妥当か、このタイミングで一旦考えきっておく。どちらも覚えやすく、シンプルなのが好き。必要に応じて修正をかけておく。8 自動運転期間
1~7を短期で終えたら、2週間~1か月単位で「続けてみる」段階に入る。まだ本番じゃない。選抜試験を通過した「やってみたい」をもとに、自分に合う目標と方法を考えているので、あとは自動的に生きるだけだ。動きながら手段に工夫を凝らすような「考える」はいいが、「これって合ってるのかな……」といった根本的なところには思いを馳せないようにする(そのための前段階)。とはいえ、機械じゃないので思いはよぎる。そんなときは「おためしおためし」と唱える。
「めんどうだな」
「おためしおためし」「今日1日くらい休んでも」
「おためしおためし」「雨だし、外出したくない」
「おためしおためし」この期間は、不完全ながら、リニューアル中の機械になる。プログラムに沿って一心不乱に動き続ける機械を目指す。バグはデリートコードでさっさと退治すること。身体的な疲れは日々メンテナンスを行うこと。
9 定期検査
2週間~1か月後、「何が効果的『かつ』好きか」を確認。改善して、また8へ。よさそうだったら、新しい目標を決めて続ける。楽しくって、あら、いつのまにか続けちゃってる、という状態になったら、本番の始まり。それまでは本契約じゃないので、合わなくて途中で離れても挫折歴にはカウントしない。「またできなかった」「続けられなかった」は、汚点と思うから、あとあとしつこくこびりつく。そもそも汚れとみなさなきゃいいのだ。
なお、「おためしおためし」と唱え続けるおためしキャンペーン、基本的にリスクはないのだが、契約書の隅に小さく記されているような注意事項はある。「めし」を連呼することで、サブリミナル効果よろしく、ごはんを食べたくなりがちなのだ。イタめし、鶏めし、いくらめし。鯛めし、焼きめし、名古屋めし。あさひるゆうめし、深夜めし。食いしん坊は気をつけなければならない。キャンペーン利用における過食には一切責任を負いません。
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月に照らされて
moonlight
名詞:月光
動詞:(正規の仕事のほかに、特に夜間に)アルバイトや副業をする。内職する
形容詞:月光の、月光に照らされた、月が出ている夜間になされるDo you moonlight as a janitor?
「クィア・アイ」 シーズン8、エピソード3、スイートな人生
管理人のバイトでもしてるの?「クィア・アイ」は、フード・ワイン、ファッション、美容、インテリア、カルチャーの専門をもった、セクシャルマイノリティの5人「ファブ5」が、悩みをもつ人々の外見や内面を1週間で変化させる番組。
英語字幕と英語音声で観ている。いつもどおり、悩みを抱える主人公が登場する。たくさんの鍵を腰につけ、大きな荷物をもち、ソファに座ろうとする。ファッション担当のタンが言ったのが冒頭の言葉だ。moonlightの意味がまったくわからなかったので、日本語字幕に切り替えた。それでも解せない。辞書を引いたら、アルバイトの意味が出てきた。夜間にこっそりと、というニュアンスだけで、違法性や蔑視はなさそう。
私はこういう言葉を知りたくて英語の勉強をしている面が少なからずあり、思わず椅子から立ち上がった。「月光」から「月光の時間帯の仕事」を連想するところが、英語の魅力的なところだ。同じシーンを繰り返し見て、部屋のエアコンを切った。窓を開ける。ベッドに座り、壁にもたれ、窓の外を眺める。月が隣の家を照らしている。静寂。この文脈と景色ごと、うっとりと記憶する。
ネイティブスピーカーは「バイトする」の意味で瞬時に使うのが当たり前すぎて、たいてい「月光」を介さない。だから「こういうのがおもしろい」と伝えると、「へえ~そうなんだ~」くらいの熱量で返ってくる。私のいちばん近くにいて、英語ができる夫も、「へえ~おもしろいね~」と冷め気味。相対的な話なので、まあ私が異常に熱くなっているだけなのだけど。
月の下で探す。新しい言葉。おもしろい言葉。