Writings

New Essays Every Monday

  • 6月2週目の日記

    6月5日(月)
    弱っていると文章が書けないもんだなあと思う。閉じてるというか、スイッチが入らない。ぼけーっとしていると連想や記憶がつながって何かしら出てくるものだけど、調子が悪いとWi-Fiの接続が悪いみたいにつながらない。

    6月6日(火)
    月曜日の夜に長いミーティングが入るようになった夫。週明けから疲れている。夕食のスンドゥブチゲを用意している間に、肉屋で買ったささみチーズカツを出す。「え、食べてもいいの!?」と言う。いつもは夕食前にこんなの出さないので、わかりやすく興奮していた。私もひとかじりする。たぶん、彼はひとりで食べるより分けるほうが好きな人。

    6月7日(水)
    友人の誕生日。デカルネロカステのカステラが今日届くように手配しておいた。ちゃんと輸送されてるかしらんと追跡情報を確認したら、彼女のほうで時間指定がされていた。品物の記載欄で中身がバレていませんようにと願う。夕方、ジムに行く代わりに遠めのショッピングモールへ歩いた。魚、日本酒、花を買う。地元の生産者の名前付きのバラが、2本で360円。名駅や栄で買うと1本500円くらいしそうなやつ。たまに行こう。

    6月8日(木)
    カポーティの短編集を読む。あまり好きじゃなくて、読後に視界が鈍くなった。併読しているミルハウザーがはずれないことに慣れすぎていた。以前なら「よさがわからない自分がだめ」と責めていたけれど、家庭教師の先生のおかげで、好きじゃないと思う自分を認められるようになった。こういう本はツイートしないでおく。もう1冊読んでみよう。

    6月9日(金)
    小松菜とツナを炒めたものをお弁当に入れた。帰ってきた夫が「こまつなつな」と命名していた。命名は「リピートしてほしい」の意味。簡単に作れるところはいいものの、ツナは値上げが激しいんだよなあ・・・・・・。久しぶりに選書の仕事をした。渡すまえに、ざっと読み直し。動画や映画を含めてご提案。

    6月10日(土)
    朝から夫が元気。中国製のスマホのOSを入れ替えて、デフォルトの変なアプリを消して、極力省エネにして、いろいろ設定をいじって・・・・・・というのがとても楽しいらしい。私は技術的な話に興味がないけれど、彼がはしゃいでるのを見るのは好き。夕方、美容室の帰りにえび天を買ってきてくれた。言ってなかったけど、実はえびが食べたい気分だった。すばらしい洞察。

    6月11日(日)
    アイロンで親指を火傷してしまった。アイロンの先の形に赤くなっている。ヒリヒリ。水ぶくれになりそう。手足の傷は、どんなに小さくても生活がしにくくなる。洗顔、料理、食事、洗濯、入浴、運動が全部おっくうだ。せっかく、昨日から丁寧なスキンケアを心がけるようになったのに、24時間も経たないうちにやる気が失せた。しばらく廃人かもしれない。

  • 猫がしゃべる場所

    enough to make a cat speak
    直訳:猫をしゃべらせるのに十分な
    意味:(主にお酒が)すばらしい

    今まででいちばんおいしかったお酒は、うちゅうブルーイングのINFINITY。
    人気だし、1年に1回販売されるかどうかくらいみたいなので、2年前以来買えてない。
    おいしさも大事だけど、入手しやすさも重視しなければ。
    そうして始めたクラフトビール巡りは、私の住む名古屋から始まって、結局名古屋に落ち着いた。
    おいしさと入手しやすさを合わせて考えると、今いちばん好きなビールはワイマーケットブルーイングのルプリンネクターだ。

    ワイマーケットの醸造所は、名駅の柳橋市場にある。
    2階の店で、作りたてのビールを飲める。
    名駅に出かけたとき、たまに寄る。
    ここで飲むルプリンがいちばんおいしい。
    ひとりでも楽しいし、人と過ごすのもいい。

    平日の開店時間は15時。
    そんな時間でも結構にぎわうから、名古屋も大人も不思議だ。
    柳橋市場に住む猫はしゃべれるかもしれない。

  • 静かな国の静かな仕事

    平日、日中はたいてい黙っている。
    体裁を繕う言葉、嘘、機嫌をとるための言葉を使わなくていい。
    消化されやすいように噛み砕いた言葉を、よどみなく話さなくていい。
    評価されるように話す戦いに加わらなくていい。
    黙っていることを叱られないし、許可を受けなくてもいい。

    平日、日中はたいてい静かだ。
    理不尽な言葉、偉い人たちの言葉、評価が耳に入ってこない。
    おしゃれな空気を作るためだけのBGMも聞かなくていい。
    電話もかかってこないから、ずっと耳栓をつけていられる。

    夫を見送って出迎えるまでのあいだ、耳栓をしたまま、誰とも話さない日がある。
    読書と思案と設計が主な私の仕事は、それでも成り立つ。
    仕事仲間とのやりとりはテキストメイン。
    月に数回の会議ではみんなでたくさん話すけれど、祭みたいな楽しい特別感があって、日常じゃない。

    先週から、幽霊になってしまった人の物語を読んでいる。
    幽霊になった自分のことを、なんとも言えない存在だと話す。
    なんとも言えない形の仕事をしている私は、彼に自分を重ねた。
    人に自分を説明するために仕事をしているわけじゃないし、周りの人たちは十分に理解してくれているから、わざわざ外向けのラベルをこしらえなくてもいいんだけど、自分の説明しにくさを煩わしく感じることがある。
    説明したくないけど、できたらいいのにと思うことがある。
    わかりやすい外向けのラベルを持っていた会社員の頃の願い、「こうなりたい」というのは叶っているので、どういう状況にいても満たされなさは残るんだろう。

    今日は雨で、近所の家の工事が休みだ。
    耳栓をしていても聞こえる音が、今日は聞こえない。
    積ん読はたくさん。仕事もたくさん。
    今週も静かにがんばろう。