Writings

New Essays Every Monday

  • 金曜日の夜のように

    make it a Friday night
    意味:金曜の夜のように楽しくやる

    「プチ祝いしちゃおう」とか「すっきりしたい」というときに思い出すフレーズ。

    最近ひとつ悩みごとがあって、どうしようか考えあぐねていた。
    週末に夫とたくさん話して、日曜日の午後、一旦の解を導き出せた。
    家庭教師の先生と読んでいる本が、日本で出ている単行本1冊分、読み終えられたことも重なった。
    「楽しいことをしよう」と、スーパーに繰り出す。
    今夜はピザパーティー。
    ちょっとお高めのお酒も開けちゃえ。

    うちのピザ生地のレシピは簡単で、混ぜるだけ。
    雑に作っても問題ないので、作っていて楽しい。
    ケチャップとマヨネーズ、すりおろしにんにくを混ぜたピザソース、そのうえにトマト、モッツァレラチーズ、ちぎったバジルをのせて焼く。
    つけ合わせは、ホタテのカルパッチョサラダ。
    レタス、タマネギ、かいわれといっしょに盛りつける。

    「できたよー」と夫を呼ぶと、るんるんで現れた。
    食欲がそのまま表れているような接写写真を撮ったあと、マルゲリータにまっしぐら。
    お酒を飲むスピードに対して、ピザを食べるスピードが速すぎる。
    自分のぶんを食べ終わり、私のを物欲しそうに見つめる始末。
    この時間を楽しんでいるみたいなので2枚目を焼いた。
    今度はマヨネーズ、しらす、青のりの、小さめのピザ。
    こちらも早々になくなった。

    洗い物が終わって彼を探すと、私のベッドに寝転がっていた。
    好物とお酒で腹を満たし、ご機嫌である。
    私がベッドに座ったら、待ってましたとばかりに抱きついてきて、そのまま寝落ちした。
    身動きがとれない。

    本当はここで一緒に寝落ちしたいところだけど、お風呂と歯磨きは欠かせない。
    しばらく寝かせて、酔いが覚めた頃に起こそう。
    それまで暇なので、Spotifyカラオケをした。
    バックストリートボーイズ(BSB)の曲を、歌詞を見ながら歌う。

    幼い頃、BSBの大ファンのクラスメイトが、毎日、お昼になったら放送室にCDを持って行っていた。
    給食の時間に必ずI Want It That Wayが流れる。
    すりこまれた影響で、ファンは増え、男女問わずクラスのみんなが歌えるようになった。
    後半のハモりとか、高音を効かせる役も自然と現れるくらいだった。
    私はBSBの音トレースだけで、英語の発音がめちゃくちゃよくなった。

    そんなことを思い出しながら、歌詞のshe、her、girl、womanを全部男性に変換して歌う。
    横にいる夫に、「大好きだよ」「君なしじゃだめ」「浮気してごめん」「やっぱり忘れられない」「どうしてあんな人を好きになるの」みたいなメッセージを、都度感情移入して捧げる。
    気持ちの転換が忙しくて、夫が全然聞いてなくて、おもしろくなる。
    「こんな歌詞をみんなで熱唱してたのかー」「英語の発声楽しいなー」と思う。

    お腹をくすぐって起こす。
    寝る支度をする。
    「またあした」と言ってそれぞれの部屋に行く。
    こういう日が続けばいい。

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  • 6月3週目の日記

    6月12日(月)
    夫が顔を私の顔に近づけて、目を高速にぱちぱち動かす。長いまつげがほっぺに当たってくすぐったい。ふたりで笑う。

    6月13日(火)
    冷房の運転開始。今年もよろしくお願いします。本格的な衣替え。注文していた新しいプチバトーのTシャツが届く。夏用の寝具も出す。さらさらのリネンが気持ちいい。ついでに、もう使わない化粧品を捨てたり、薬箱の整理をしたり。防災ボックスのローリングストックの確認をしばらく忘れていたのを思い出す。やらねば。

    6月14日(水)
    病院と美容室をはしご。髪を伸ばしている最中で、今は毛先が肩に当たるくらい。カット後、ヘアアイロンで毛先をカールしてもらったら、スパイファミリーのアーニャみたいになった。私は普段、アーニャとヨルさんをたして2で割った感じと言われる。好奇心が強くて言い間違いの多いところがアーニャ、仕事を迅速で瞬殺する、本質を刺しに行くところがヨルさんの要素。私のことをよく知っている美容師さんは、この話を聞いて、お腹を抱えて笑っていた。しばらく鏡からフレームアウトしていた。昔、「私、しいたけ占いによると『金属バットをもったリス』らしいです」と言ったときも爆笑していた。なぜか間違えて「チェーンソーをもったリス」と覚えられている。

    6月15日(木)
    地元九州の醤油屋、ジョーキュウで注文した味噌が届いた。小学生の頃、家庭科の課題で自分で味噌を選んでから、ずっとここの麦味噌。この味噌といりこだしで作る味噌汁が大好き。思い立って、カスタマーセンターに電話した。年に数回買い物をするけど、私が注文したあとのタイミングに限ってダイレクトメールが届いていたので、止めてもらうことに。担当の男性に「わざわざ御社からご連絡いただかなくても、こちらから積極的に情報を取りに参ります」と伝えたら、「ははははは」と声が遠くなった。つい電話を離すか体を反らすかしたらしい。「ありがとうございます」と言いあって終わった。

    6月16日(金)
    歯列矯正の調整日。担当の女医さんは、私がメーカーで働いていたことを知っている。だからよく、ものづくりとかコスト削減の話をする。今日は、歯列矯正器具のメーカーのシェアは海外メーカーが大半で、その影響で値上げが著しいという話だった。今年の10月から、器具代も調整代も値上げの予定。私は2年かかる見込みで、去年の10月からなので、1年お得だ。「先見の明がありますよ」と言われた。えっへん。

    6月17日(土)
    歯が痛くてごはんを食べにくい。小さく切ってやんわりと噛み、飲み込む。

    6月18日(日)
    体調が悪いものの、週末にしかできない仕事をする。写真を夫にまかせ、私はそのディレクションとデザインを。共同で何かを作るのは、どんなにささいなものでも楽しい。撮影用の布は紙で代用した。注文の多いディレクター。着々と仕事をこなして納品するフォトグラファー。加工して、「めっちゃいいやん」と自画自賛のデザイナー。

  • 憧れのモーニングルーティン

    wake up and smell the coffee
    直訳:起きてコーヒーの匂いをかぐ
    意味:現実に目を向ける、ちゃんと目を覚ます

    コーヒーで始める1日に憧れながら、朝は白湯を飲む。
    コーヒーショップで働いていたことがあるくせに、コーヒーが得意じゃない。
    香りは好きだ。
    味も好き。
    産地で味が変わるのも好き。
    器具にこだわるのも好き。
    とても上手にドリップできる。
    ただ胃が受けつけない。
    デカフェでもだめ。
    デカフェエスプレッソのラテなら、体調のいい日にかろうじて。

    名古屋はモーニングサービスの充実した街だ。
    毎朝同じ店に行ったり、行きつけの店のコーヒーチケットをもっていたり、店員に「いつもの」でオーダーが通ったりすることが人々の日常。
    そういう店にデカフェはないし、ラテもない。
    もう名古屋に来て何年も経つけれど、いまだに重要な部分に溶け込めていない気がする。
    コメダにはたまに行くものの、頼むのはホットココア、背伸びしたおこちゃま感が拭えない。

    白湯にモーニングを出してくれる店はないだろうか。
    もちろん白湯に課金する。
    白湯を飲んで、ゆっくり体を起こして、おいしいトーストを食べて、同じことをやっている人たちとの一体感を得て、1日を始めてみたい。