Writings

New Essays Every Monday

  • 踏んだり蹴ったり

    Amazonで買ったものに不具合があったので、返品のためローソンに行きたいと夫が言った。不安そうなのでついていく。メルカリの発送作業に似ていた。平日なら郵便局でもできる。

    スーパーまでの道、
    私「軽いものなら平日に私がやるよ。スーパーに行く途中で、ほら、あの郵便局Aに行ける」
    夫「ああ、そういえばあそこにあったね」
    私「ジムに行く途中で、郵便局Bにも行けるし、郵便局Cにも行けるよ」
    夫「それってどれくらい大きいの?」
    私「どこも変わんない。大きさ求めるなら、反対方向の郵便局Dでしょ。他は踏んだり蹴ったりだよ」
    夫「ん?」
    私「ん?踏んだり蹴ったり」
    夫「違うよな」
    私「ん?ほ。違う気がする。でもなんだっけ」
    夫「『似たり寄ったり』な。どこ行っても踏んだり蹴ったりって、ひどいぞ」
    と言って笑った。

  • 私の芝生

    友人のウェブサイトと、その友人と始めるポッドキャストのウェブサイトを作っていたら、自分のペンネームのウェブサイトも作りたくなりました。

    なんといっても安いんです。ウェブサイトはドメイン(アドレス)とサーバー代で年間2000~3000円。私がペンネームではてなブログを始めたのは、ちょうど1年前。広告なしにしたくて、月1000円払っていました。それが節約できます。

    ドメインを取るにあたって、今まで下の名前だけだったペンネームに苗字をつけることにしました。実名の苗字は珍しすぎて使えません。いくつかリストアップした中から「川瀬」に決め、夫に伝えました。彼から「かわせー」と呼ばれて、愛着が生まれました。赤ちゃんはこんなふうに、名前という記号と自分を合わせていくのでしょうか。

    ドメインとサーバーの契約は、時間がかかりつつも終わりました。WordPressでのデザインは、いつ何個やっても楽しいです。はてなやnoteではあまりいじれないぶん、自由に設計できる更地は輝いて見えました。これまで書いてきた文章を移し、パソコンとスマホを行き来しながらデザインを細かく修正しました。

    作家のオースティン・クレオンさんが、自分のドメインでブログを始めることを、芝生に例えています。

    The beauty of owning your turf is that you can do whatever you want with it.
    自分の芝生をもつ。やりたいことを何でもできるのが魅力。

    It feels good to reclaim my turf. It feels good to have a spot to think out loud in public where people aren’t spitting and shitting all over the place.
    土地を開拓して芝にするのは気分がいい。人目を気にせずに、独り言を言える場所があるって気持ちいい。そこには、いたるところで唾を吐いたり、汚したりするような人がいないんだ。

    芝生に大の字になって寝転がるように、のびのびと書いていきたいです。はてなブログと同様、また読んでいただけたら嬉しいです。

  • エンディングシーン

    花の寿命が来たときは、食卓の花瓶から台所のゴミ箱に向かうまでに、「ありがとう」と口に出して言うか、心の中で唱えるかする。命日が週末と重なったときは、夫も行動を共にする。私が「ありがとう」と言い、彼が「ぺこり」と言いながら頭を下げる。

    ある晩、「歯磨き粉がそろそろなくなる」と言われた。「次のやつ、買ってあるよ」と返した。私が見たとき、彼は残った歯磨き粉を出すのにうにょーんと力を振り絞っていた。私の番になって、だめもとでチューブを押してみたら、ぽんっと1回分出てきた。もう1回分はある。たぶん彼は3回分のためにがんばったはずだ。夜遅く、私が新しいのを取り出したり開けたりしなくてもいいように。捨てるのは自分の番になるように。

    ラーメンや冷やし中華など、スープがかかったメニューを食べたあと。私はお皿を持ってシンクに行き、スポンジに洗剤をつける。続くはずの夫が来ない。スポンジを置いて、シンクから死角になっている場所を見ると、彼がスープの残りをにまにましながら飲んでいる。「塩分過多です、だめです」と取り上げるけれど、実はあの「悪いことをしてる顔」は好きだ。

    大きなエンディングを迎えるまでの、小さなエンディングたちの連なり。