Writings

New Essays Every Monday

  • sell like hot cakes
    直訳:ホットケーキのように売れる
    意味:どんどん売れる、飛ぶように売れる

    連休の始まりの朝、ホットケーキを焼いた。私のには、はちみつをたっぷりかけた。甘いのよりしょっぱいのが好きな夫にはチーズオムレツを添えた。

    その日、買い出しのあとに、彼が体調不良を訴えた。強い喉の痛み。

    はちみつレモン湯を作って飲ませる。うまいうまいとがぶがぶ飲む。はちみつ単体は食べないくせに、はちみつレモン湯は飲む。1杯につき、はちみつとレモンを大さじ2ずつ使う。私のはちみつがすごいスピードでなくなった。

    台風が来る前に、買いものに行こう。はちみつを2本買う。


  • 7月31日(月)

    年明けから長いことエネルギーを割いていた行政手続き。完了の通知が届いた。開封する手がふるえた。嬉しい。涼しくなった6時頃、スーパーへ。ぷりぷりのえびチャーハンとビールの夕食にした。夫が「うまーい」とぱくぱく食べていた。そうなの、今日は味付けがうまくいったのよ。

    8月1日(火)
    婦人科と皮膚科。待合室で、番号を呼ばれるのを待ち続けた。夕方、昼食を忘れたことに気がついて、帰りにゴディバでショコリキサーを買って飲んだ。今日は50%にしたけど、72%が好みだな。スタバのダークモカチップクリームフラペチーノが好きだったのに、販売終了になってしまった。店員さんが「ダークモカチップフラペチーノのエスプレッソ抜きならできますよ」と言うけど、値段が変わらないので、なんだか損している気分だ。「それならいっそゴディバに課金しよう」というのが最近のブーム。スタバと違って混んでないのもいい。

    8月2日(水)
    第2回「おうちごはん映画祭」のウェブサイトを公開した。夫婦で、ごはんを作って食べて、ごはんが出てくる映画を観るイベント。公式グッズも作った。正確には、のれんやエプロンなどのグッズは2019年に作っていて、今回は資産として再利用する。今回は新しくSUZURIのオンラインストアを作ってみた。「おうちごはん映画祭」を真似したいと思った人の役に立てるといい。公開後しばらくして、夫がアクセスコードにしたがってチケットの申し込みをしてきた。

    https://ouchi-gohan-movie-fes.weebly.com/

    8月3日(木)
    英語が楽しい。英検1級の単語帳に長いこと取り組んでいるが、なんとなく血肉になってきている感がある。完全に覚えたものは線を引いて消すのだけど、それが増えている。この単語帳に載っている言葉を全部覚えられたら、アプリのmikanのテストで全クリできたら、泣いちゃう気がする。

    8月4日(金)
    夫が年休。時計の電池交換、寿司、たこ焼きを目的にイオンモールへ。東京にいたとき、イオンを毛嫌いする人に会ったけど、私はイオンがまあまあ好き。そこにいる人たちが、「生活してる」って感じでいい。近場の小さなイオンでは手に入らないような食材を買った。ぷりぷりの大きなえびが安いとか、魚売り場の西京漬けのラインナップが豊富だとか、そういうことに満足した。帰ってしばらくして、体調不良の兆しの中でもちょっと危ない系が現れて、急遽病院へ。問題ないと言われて安心した。

    8月5日(土)
    「伊勢うどん許せない問題」が解決の見込み。伊勢うどんはやわらかいうどんのこと。私はコシのあるうどんLOVEで、長いこと伊勢うどんを許せなかった。でも許せなかった理由が「初めて買った日に、鍋のシメに入れたこと」だと判明して考えを変えた。やわらかいうどんを鍋で煮込んだら、ただの小麦のかたまり、何がうまいのかわからないのも当然だ。本来は出汁のきいた醤油と絡めて食べる。三重出身の夫は「すばらしい食べもの」と絶賛する。相手の好きなものを好きになる努力をするのが私たちの愛情表現である。今日はしぶしぶ食べた。まあまあだった。この前一口分けてもらった、別のメーカーのほうがおいしかった。次はそっちを買ってくる。

    8月6日(日)
    「日本の古本屋」で買った、渡辺一夫の著作集が届いた。増補版、全14巻、付録あり。今年、全集的なものを買うのは3回目だ。そろそろ今年の買い物はいいかな。しっかり大切に読む。渡辺といえば、フランスのルネサンスの研究である。苦手意識のある世界史や宗教を学び直してから、渡辺に向かいたいと思っている。

  • 夫が自分で日焼け対策をしない。日焼け止めは私が買って、毎朝私が彼の顔に塗る。彼は「もー」「ぶぶぶぶぶ」「ぎゃーす」「ぬおおおお」といった奇声を毎日飽きずに発する。
    「日傘買おうよ」と言ったら、「いらない」と返ってきた。
    仕方がないので私が買った。似合うブルーグレー。邪魔にならない軽量タイプ。スマートな自動開閉。渡したら、次の日から使うようになった。実はこれ、よくある手法である。彼は自分で自分のためには買わないが、私が君のためだよと買ったものには弱いのだ。しかも、スペックが優秀。文句のつけようがない。
    休みの日、出かけるとき、彼は自然に日傘を携えていた。まるで自分で買ったかのよう。こういうところが、かわいい。

  • punch a clock 
    直訳:時計にパンチする
    意味:タイムレコーダーを押す、毎日出勤する

    朝起きて、お弁当をつくる。お湯をカップに入れて、冷まして飲む。そのかたわらで、夫が朝食を摂る。
    見送って、私も朝ごはん。いつも白米と納豆。たまにしらすやネギを混ぜ込む。朝の薬を飲んで、身支度し、軽く掃除して、洗濯機を回す。あっちの部屋、こっちの部屋と、行き来する。
    書斎の椅子に座る。仕事スタート。独りだなあと思う。この何にも制限されない、誰にも頼れない、自力で過ごす時間が好きだ。タイマークロックを押すので、いつもこの表現を思い出す。
    夕方、時計にパンチして終業。夫との時間が始まる。

  • 7月24日(月)
    マリオの映画を観に行った。今さらだと思ったけど、まだ大きなスクリーンが割り当てられていて満員だった。某キャラクターが自分たちを「戦うにはかわいすぎる」「死ぬにはかわいすぎる」と言うシーンで、夫を思い出した。帰って彼に話したら、「あれ?身に覚えが」と言っていて笑った。

    7月25日(火)
    夕方、ビールを飲んでぼけぼけっとする。夕飯はお弁当を買ったので、作らなくていい。エアコンのきいた部屋の窓から、外の洗濯物が見える。カラカラに乾いて、風でくるくる回っている。

    7月26日(水)
    週末の文学レッスンに備えて、ミルハウザーを読んだ。A Protest Against the Sun。家族が海で過ごす話。主人公の女の子が終始イライラしている。学者の父親が難しい言い回しで話す。母親は存在感が薄い。防寒着を着た男が現れて海岸を闊歩する。重要な部分の読解がうまくいってない気がする。昼過ぎ、スーパーに買い物に行った。溶けそうだった。今日みたいな日しかない名古屋の夏、海でのバカンスを理解できない。

    7月27日(木)
    この前、米津玄師の「優しい人」を流しながらアイロンをかけていた。歌詞に「優しくなりたい 正しくなりたい 綺麗になりたい あなたみたいに」とある。普段日本の曲を聞かない夫が、ぼそっと「欲深いね」とつぶやいた。今日、「優しい人」の該当箇所で、彼の言葉を思い出した。しんみりした曲なのに、最後に吹き出してしまう。

    7月28日(金)
    The Knife Throwerの予習。ナイフ投げを芸とする人の話。やってる人も怖いんだけど、アシスタントに協力を求められたときに、嬉々として手を上げる観客も怖い。

    7月29日(土)
    日帰りで東京。4年ぶり。名古屋駅がたいへん混雑。朝からぴよりん(名古屋コーチンを使ったひよこ型スイーツ)に行列ができている。私は人よりぴよりんの数が多かった時代を知っているので、予約しないと買えない最近の状況をほほえましく思う。昔都心に住んでいたくせに、電車を乗り間違えた。京浜東北線の各駅停車に乗りたかったのに、快速に乗ってしまった。用事をすませたあと、東京駅のリラックマストアで夫におみやげを買う。名古屋に戻ると、人の少なさにほっとした。電車から見える空が広い。名古屋が好きだ。

    7月30日(日)
    文学レッスンの日。A Protest Against the SunとThe Knife Throwerの予定が、前者に時間を食ってしまい、後者は来週になった。A Protest Against the Sunは、今まで読んでいたミルハウザーの作品よりもだいぶ古く、最近のと英語の感じが違う。「なんか重要な点を読み逃してる」という予感は当たりで、先生に質問してようやく細部の理解が追いついた。なるほどなるほど、父親がめちゃくちゃ嫌な人だ。先生が「こんなイメージ」と父親の台詞をいかめしく朗読してみせてくれて、「あーこういう人ほんとに勘弁」と思った。授業の終わりに、「先生に会ってから、先生のクリエイティビティに感化されてブログを再開したし、この前エッセイをコンテストに応募したんですよ」と伝えたら、喜んでくれた。勇気を褒められた。大学の採点業務が終わったら読んでくれるらしくて、嬉しい。

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