Writings

New Essays Every Monday

  • 7月24日(月)
    マリオの映画を観に行った。今さらだと思ったけど、まだ大きなスクリーンが割り当てられていて満員だった。某キャラクターが自分たちを「戦うにはかわいすぎる」「死ぬにはかわいすぎる」と言うシーンで、夫を思い出した。帰って彼に話したら、「あれ?身に覚えが」と言っていて笑った。

    7月25日(火)
    夕方、ビールを飲んでぼけぼけっとする。夕飯はお弁当を買ったので、作らなくていい。エアコンのきいた部屋の窓から、外の洗濯物が見える。カラカラに乾いて、風でくるくる回っている。

    7月26日(水)
    週末の文学レッスンに備えて、ミルハウザーを読んだ。A Protest Against the Sun。家族が海で過ごす話。主人公の女の子が終始イライラしている。学者の父親が難しい言い回しで話す。母親は存在感が薄い。防寒着を着た男が現れて海岸を闊歩する。重要な部分の読解がうまくいってない気がする。昼過ぎ、スーパーに買い物に行った。溶けそうだった。今日みたいな日しかない名古屋の夏、海でのバカンスを理解できない。

    7月27日(木)
    この前、米津玄師の「優しい人」を流しながらアイロンをかけていた。歌詞に「優しくなりたい 正しくなりたい 綺麗になりたい あなたみたいに」とある。普段日本の曲を聞かない夫が、ぼそっと「欲深いね」とつぶやいた。今日、「優しい人」の該当箇所で、彼の言葉を思い出した。しんみりした曲なのに、最後に吹き出してしまう。

    7月28日(金)
    The Knife Throwerの予習。ナイフ投げを芸とする人の話。やってる人も怖いんだけど、アシスタントに協力を求められたときに、嬉々として手を上げる観客も怖い。

    7月29日(土)
    日帰りで東京。4年ぶり。名古屋駅がたいへん混雑。朝からぴよりん(名古屋コーチンを使ったひよこ型スイーツ)に行列ができている。私は人よりぴよりんの数が多かった時代を知っているので、予約しないと買えない最近の状況をほほえましく思う。昔都心に住んでいたくせに、電車を乗り間違えた。京浜東北線の各駅停車に乗りたかったのに、快速に乗ってしまった。用事をすませたあと、東京駅のリラックマストアで夫におみやげを買う。名古屋に戻ると、人の少なさにほっとした。電車から見える空が広い。名古屋が好きだ。

    7月30日(日)
    文学レッスンの日。A Protest Against the SunとThe Knife Throwerの予定が、前者に時間を食ってしまい、後者は来週になった。A Protest Against the Sunは、今まで読んでいたミルハウザーの作品よりもだいぶ古く、最近のと英語の感じが違う。「なんか重要な点を読み逃してる」という予感は当たりで、先生に質問してようやく細部の理解が追いついた。なるほどなるほど、父親がめちゃくちゃ嫌な人だ。先生が「こんなイメージ」と父親の台詞をいかめしく朗読してみせてくれて、「あーこういう人ほんとに勘弁」と思った。授業の終わりに、「先生に会ってから、先生のクリエイティビティに感化されてブログを再開したし、この前エッセイをコンテストに応募したんですよ」と伝えたら、喜んでくれた。勇気を褒められた。大学の採点業務が終わったら読んでくれるらしくて、嬉しい。

  • turn into a pumpkin
    直訳:かぼちゃに変わる
    意味:帰りが遅くなる

    終電間際に使いたい、大好きな表現。
    「まだいいじゃん」と引きとめられて、「いや、かぼちゃに変わるんですよ」って言いたい。

    名古屋はおもしろい街だ。
    東京がとりわけ違うだけなのかもしれないけど、夜の7時には出歩いている人が少なくなる。
    名駅もそうだし、栄もそう。
    発達している地下街の店も8時には閉まる。
    外にいないだけで、店で食事している人はそこそこいると思うけど、街の静けさは都会とは思えない。
    人々は、8時の電車で帰って、10時には寝てそう。
    そして早起きしてモーニングに出かけてそう。

    東京でわりと夜遊びしていた私が今しないのは、名古屋の夜の健康的な感じ、さみしい感じの影響もあると思う。
    酔っ払ってご機嫌な人とすれ違ったり、酔っ払った人ばかりの電車で連帯感を感じたりするのも楽しいけれど、叶わない。

    この前、東京に行った。
    夏休み、かつ週末ということも重なって、激混みだった。
    次は閑散期の平日に行って、なつかしい人たちとごはんを食べたい。
    近場に宿をとっているからと、夜遊びして、かぼちゃになりたい。

  • パフェを食べたいけれど、店へ行くには心が折れる暑さの日。
    そんなときに作るのがこれ。
    白玉、みかん、つぶあん、ハーゲンダッツバニラ。
    自分で作ると白玉を増量できていい。
    つぶあんは井村屋のチューブを使うと腐らない。
    白玉、つぶあん、アイスの三角食べをして、たまにみかんの酸味を味わう。
    簡単でおいしいのでおすすめです。

  • 7月17日(月)
    体調が悪すぎる。新しく飲み始めた薬の副作用なのか、PMSなのか、どっちもなのか、判断がつかない。先生に電話したら、副作用が出る薬じゃないとのこと。じゃあPMSだ。そういえば腰が痛い。

    7月18日(火)
    私は名古屋市長を、親しみを込めて「たかし」と呼ぶ。今日はとても暑い日。市内の学校に、「エアコンがない場所での体育の授業禁止」を通達したとニュースで見た。たかし、やるじゃん。夕飯を食べながら、夫と一緒にたかしを称えた。国の政治はよくわからないことが多いけど、市や区の行政は身近でわかりやすくておもしろい。

    7月19日(水)
    結婚10周年。日常的なごはんを作ろうという話になり、私の地元、大分県の鶏めしと、刺身、味噌汁の材料を買いに行く。酒の岡田屋で初めて日本酒を買う。高島屋の地下で鶏肉を買う。刺身はたこ。全部で5000円。とびきり豪勢じゃないのが、なんかいい。小さなひまわりのブーケも買った。帰って家中を掃除してから飾った。

    7月20日(木)
    朝、ひまわりがしおれていた。花屋でもらった栄養剤を入れてしばらくしたら復活した。すくすく元気。

    7月21日(金)
    ジムのマシントレーニングの日。筋肉痛と眠気が強く来るので、週1回、金曜日だけ。マシンは、膝や腰を痛めずに、正しいフォームで筋トレできるのが魅力。下半身を中心に鍛えた。

    7月22日(土)
    夫、美容室の日。noteを読んでくれた美容師さんが、「Back to 初心」をテーマに切ってくれた。マッシュショート、外国の少年風。めちゃくちゃかわいい。褒めていたら、彼は得意げに体を回転させたり、頭を揺らしたり、「フッ」とキメ顔をしたりした。まぶしいいきもの。

    7月23日(日)
    縁を切った母親からの連絡に気が滅入る。父の死後の法的手続きを怠ったことでよくない事態に陥っているらしい。私は既に手続きを済ませているので、彼女の問題とは無関係である。今日は1日を勉強と読書で埋めた。だけどその隙間、食事を用意するときなどに、過去のできごとがあれこれ思い出されてきつかった。また自分を、また生活を壊されるんじゃないかと怖い。うずくまって泣いていたら、眼鏡に涙が溜まった。夫が現れて、「もー。こんなにぐちゃぐちゃにしてー」と引き取っていった。彼はクリーニングした眼鏡を差し出して、「これつけてたら最強」と言った。

  • 7月10日(月)
    舞台「桜の園」のチケットを買った。平日の昼公演しかなく、「誰が行くねん」と思ったが、私たちである。夫は年休をとった。年初に観た「かもめ」といい、チェーホフの年だ。「桜の園」の読後は正直「ふーん」という感じだったけど、演出が新しそうなので楽しみ。他の短編も読み進めよう。

    7月11日(火)
    最近ずっと書いている文章に夫の意見を求める。彼は「ここはいらんね」とばっしばし切ってくる。それは往々にして、私が「これはなーいまいちかなーリズムがなー」と思っていた箇所。その一方で「ここは紺ちゃんの感情でしょ、大事にしよ」とか言う。この視点の一致やスピード、バランス感覚がたまらん。

    7月12日(水)
    今日も今日とて文章を書いた。9割完成してるように見える原稿をさらに磨いたり、数文字削ったり、思い切って壊して書き直したりするのは楽しい。この段階になると、音楽を流しながら作業する。書く前の構想用は比喩の多い曲を選ぶけど、推敲用はわかりやすい言葉の曲を選ぶ。TXTの「紫陽花のような恋」にした。いい曲。歌詞がシンプルで、繰り返し聞いていると頭のモードが切り替わり、文章を音楽的に修正するのに役立つ。音読でつっかえる場所、かたい表現、すぐに理解しにくい文章、漢字や同じ音が続く箇所を変えた。

    7月13日(木)
    noteにエッセイを投稿した。コンテストに応募するためのアカウント。準備から公開、告知ツイートまで、ずっと緊張していた。読んでくださった方からのハートやリプライがうれしい。

    7月14日(金)
    会社員の頃にお世話になった人たちや、学生時代の友人に連絡する。普段は自分から「読んでください」と言うタイプじゃないのだけど、殻を破ってみた。会社の人には連絡した勇気を褒められ、食事に誘われ、友人には「こういう作品書いたらまた見せて」と言われた。うれしくてにまにましたり泣いたりした。なんというか、オンラインのハートだけ見るとただの数字なんだけど、その中に確実に、リアルの知り合いやSNSのフォロワーさんがいることがすごい。

    7月15日(土)
    夫と、映画「ワン・デイ 23年のラブストーリー」を観た。23年分の7月15日に焦点を当てた作品。昔一緒に観たはずなのに彼が覚えてなくて、もう一度観ようと約束していた。本当は日中に観るつもりが、おたがい昼寝でいそがしくて夜になった。私たちの23年の定点観測、どんなだろうな。ハグか寝てるか食事してそう。

    7月16日(日)
    週末、夫とスーパーに行くのが好きだ。生活してるって感じがして、何年経っても飽きない。暑かったので、「暑い」と言うのを禁止した。ふたりで「寒い」とばかり言っていた。最近私の食欲がないから、値段が張ろうが何を買ってもよいことにする。いくらとハーゲンダッツ。お昼は海鮮丼、おやつに白玉クリームあんみつを作った。夜、急に体調が悪くなる。台所にぺたりと座っていたら、それもままならなくなって、倒れてしまった。声が出なくて、夫を呼べなくて、呼吸が上がってパニックになりそうだった。しばらくして、声が出るようになって呼んだら来てくれた。安心したら涙が出てきた。

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