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  • 木曜日、弁当を作った。ゆかりごはん、とり天、玉子焼き、にんじんの明太きんぴら、蒸しさやえんどう。
    金曜日、弁当を作った。ゆかりごはん、とり天、玉子焼き、にんじんの明太きんぴら、蒸しさやえんどう。

    多めに仕込んでいたから、2日連続で同じ弁当になるのはわかっていた。全部おいしいからいいじゃんと思いつつ、金曜日は玉子焼きを2個から4個に増やし、申し訳なさを隠すように弁当箱に詰めた。

    夫が横で紅茶を淹れていた。ふろしきで包む前に「昨日と同じでごめんね」と言うと、すぐに「とり天弁当2(ツー)やな!」と返してきた。

    ツー。発売を楽しみにしているシリーズもののイメージ。ポケモンのミュウとミュウツーのように、進化を重ねているもののイメージ。瞬時の、簡潔な名づけに、「ぼくは食べるのを楽しみにしてる、玉子焼き倍量で進化したとり天弁当を!!」というメッセージを受け取った。完全な意図ではないかもしれないが、日々のやりとりの中で、虎視眈々とセンスをチューニングしている人だ。半分くらいは狙っている。

    コピペ弁当のリネームで私の罪悪感を消し去り、知的好奇心まで刺激した彼は、好物のとり天を携えて颯爽と出かけていった。

  • コピー&ペーストで確認可。

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    ひっくり返すと、0と1ばかりが並んだ
    ただこれだけの文章に
    こんなに隠れているなんて

    すきま も



    ルールに漏れず0と1

    ぜんぶ0と1になるのが嫌だわと
    ノートとえんぴつに戻っても
    そのdigit、指にも紙にも黒鉛のあとにも
    アルファベットが隠れている
    ひっくり返すと、数字になるよ

    参考
    ASCIIコード変換機 *「2進数」を選択し、「ASCII→文字列変換」
    http://web-apps.nbookmark.com/ascii-converter/

  • 夫と日曜日にスーパーに行く。彼は歩くのが速く、すたすた先を行く。私は追いつけなくて、後ろから「歩くの速いです」と言う。彼は立ち止まって私を待ち、歩を緩めてまた道を行く。

    この人は大学に入るまで2浪している。その期間、何をしてたのですかと聞くと、「紺ちゃんに会うために時間調整してました」と言う。彼が先見の明をもっていたおかげで、私たちは新卒で入った会社で同期として出会った。実態をよくよく確認すると、浪人1年目こそ予備校に通っていたが、2年目は図書館に通っていたらしい。センター試験に関係ない、ネットワーク技術の勉強をしていたらしい。ほんとうに私を待っていたのかもしれない。

    私は浪人も留年もせずに卒業し、すみやかに就職しなければならなかったので、その2年間の余白がうらやましい。もともとの性格もあるし、同級生よりも2歳上になることも関係していると思う、彼は悠然だ。周りに流されず自分のことに集中し、成果を出す。頼もしい。憎たらしいくらい余裕がある。

    いっしょに暮らしていて、至らないことが多いのは私のほうだ。彼の姿や行動を見て学び、反省しながら、なんとかよりよい人間になりたくて生きている。

  • 夕飯を作りながらよくコナンを観る。iPadとNetflix。もう何回リピートしたかわからない。あらかたストーリーは知っている。それなのに繰り返し観てしまう理由はふたつ。

    ひとつは、パターンが一定なこと。事件が起きて、コナンが推理して解決する。この安心感。画面を見ていなくても話がわかる。毎日新しい番組、新しいエピソードを観るとなると、画面から離れられなくて困る。展開によってはハラハラドキドキ緊張してしまう。20分強で終わるのもいい。

    もうひとつは、静かな時間を避けられること。夕飯を作るあいだ、ひとりで家にいるのは少し怖い。夫が飲み会で遅くなる日はもっと怖い。すーっとリビングのドアが開いて、黒い人が現れるんじゃないかと思う。コナンを観るから黒い人が怖いのだけど、コナンを流していると黒い人がうちに現れないんじゃないかと思える。

    今年も夏至が過ぎた。日が短くなる。暗い時間が増える。黒い人が怖い。だからコナンを観る。だけど黒い人が現れる。だからコナンを観る。だけど、

  • 新しい習慣をつくるとき、私はとても時間をかける。「よし、やろう!」と意気込んで、数日後に「あっ、できなかった。だめじゃん自分」ということがない。どこがどう楽しいか、何につまずくかまでよく観察して、自分の本心やパターンを見つけ、新しい目標につなげるためのシステムにする。この習慣の制作期間を「おためしキャンペーン」と呼ぶ。おためしが本番になった頃には楽しく続いてる、自信がついてる、もし途中離脱したとしても傷つかないお得なキャンペーンだ。

    1 「やってみたい」を検知する

    2 「やってみたい」を常温にする
    「とてもやってみたい!!!」も、「あ、ちょっとやってみたいかも」も、手にしたまま数日待つ。熱いまま始めるのは、始めやすい半面、冷めやすい。低温のものは、徐々に熱を帯びるものもあれば、冷めたままのものもある。見たり聞いたりして入ってくる多くの情報は私を刺激して、瞬時にいろいろな感情をもたせるけど、それが本当に今やってみたいことなのか、あとでいいのか、実は必要ないのかはその時には判断できない。なりふり構わず始めて失敗して、を高速に繰り返すよりも、何が本当の「やってみたい」なのか、「時間のふるい」にかけて始めるほうが私には合っているみたいだ。時間は有限だし、体力もないし。

    3 やってみる(「やってみたい」選抜用)

    4 1次テスト
    軽くやってみたあとに、もう一度ふるいにかける。好きか嫌いか。好きなところも嫌いなところもあるなら、もっと検査時間が必要なので前に進む。嫌いなら止める。嫌いなものを無理してやらない。「嫌いって思う自分がだめ」って思わない(とあえて言うということは、昔はそう思ってたってことだ)。

    5 超短期目標を決める
    わかりやすい、覚えやすい、ちょっとがんばったら届くような目標を決める。「やってみたい」を選抜試験してから目標を立てるのがキモ。現実的な目標が立てられる。一度やってみているので、頭でっかちで崇高なだけの目標にはなりにくい。

    6 やってみる(目標と手段の精査用)
    決めた目標に向かう。やっぱり嫌いなら、ここで止める。

    7 2次テスト
    目標と手段が妥当か、このタイミングで一旦考えきっておく。どちらも覚えやすく、シンプルなのが好き。必要に応じて修正をかけておく。

    8 自動運転期間
    1~7を短期で終えたら、2週間~1か月単位で「続けてみる」段階に入る。まだ本番じゃない。選抜試験を通過した「やってみたい」をもとに、自分に合う目標と方法を考えているので、あとは自動的に生きるだけだ。動きながら手段に工夫を凝らすような「考える」はいいが、「これって合ってるのかな……」といった根本的なところには思いを馳せないようにする(そのための前段階)。

    とはいえ、機械じゃないので思いはよぎる。そんなときは「おためしおためし」と唱える。

    「めんどうだな」
    「おためしおためし」

    「今日1日くらい休んでも」
    「おためしおためし」

    「雨だし、外出したくない」 
    「おためしおためし」

    この期間は、不完全ながら、リニューアル中の機械になる。プログラムに沿って一心不乱に動き続ける機械を目指す。バグはデリートコードでさっさと退治すること。身体的な疲れは日々メンテナンスを行うこと。

    9 定期検査
    2週間~1か月後、「何が効果的『かつ』好きか」を確認。改善して、また8へ。

    よさそうだったら、新しい目標を決めて続ける。楽しくって、あら、いつのまにか続けちゃってる、という状態になったら、本番の始まり。それまでは本契約じゃないので、合わなくて途中で離れても挫折歴にはカウントしない。「またできなかった」「続けられなかった」は、汚点と思うから、あとあとしつこくこびりつく。そもそも汚れとみなさなきゃいいのだ。

    なお、「おためしおためし」と唱え続けるおためしキャンペーン、基本的にリスクはないのだが、契約書の隅に小さく記されているような注意事項はある。「めし」を連呼することで、サブリミナル効果よろしく、ごはんを食べたくなりがちなのだ。イタめし、鶏めし、いくらめし。鯛めし、焼きめし、名古屋めし。あさひるゆうめし、深夜めし。食いしん坊は気をつけなければならない。キャンペーン利用における過食には一切責任を負いません。

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